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大化改新の方程式(138) 唐使を祭祀都市・飛鳥へ

中大兄皇子が「飛鳥に戻りたい」と孝徳天皇に奏請した653年は、難波長柄豊碕宮(前期難波宮)が完成した翌年であり、そして、23年ぶりの遣唐使を派遣した年であった(前回の記事で「15年ぶりの遣唐使」としていましたが間違いでした。訂正済)。

なぜこのタイミングなのか。

通説では、この事件は孝徳天皇と皇太子・中大兄との外交政策をめぐる対立が顕在化したものだとしている。
もちろん、新羅寄りの外交姿勢をとる孝徳天皇に対する群臣たちの不満が中大兄一派(すなわち宝姫王)を利したことはたしかだが、やはり私はこのタイミングに飛鳥還都の動きがあったことに注目したい。

1つには、飛鳥に戻って再び民を使役する“興事”を予定しているので、難波宮の完成を待つ必要があったといえよう。

そしてもう1つは、遣唐使が唐からの答礼使をともなって戻る前に、飛鳥で“やり残したこと”をすすめておきたかったということだ。

長い遣隋・遣唐の歴史のなかで中国から正式な答礼使がきたのは3回しかない(厩戸が描いたシナリオ大化改新の方程式(61))を参照)ということから、中国からの答礼使が倭国のような絶域に派遣されるのはまれなことだと考えがちだが、当時の大化政権の面々にとってはそうではない。
むしろ彼らは唐使が来倭するのは当然のことと想定していたにちがいない。
なぜなら、23年前とはいえ前回の遣唐使(第1次遣唐使)でも、そしてすでに伝説となった厩戸皇子の遣隋使でも中国王朝は答礼使を派遣している。とくに前回の答礼使であった高表仁はその使命を果たさずに帰国している。

だからこそ、「その宮殿の有り様はたとえようもない」と謳われた難波宮は、唐からの答礼使を迎えることを大前提で建造されたわけで、その完成前に遣唐使派遣はあり得なかった。まさに、私の持論である「対等外交のためのエビデンスづくり」の路線にそった展開なのである(詳しくは「対等外交」のためのエビデンス大化改新の方程式(54))を参照されたい)。

だが、このタイミングで宝姫王サイドから、唐からの答礼使は本来首都である飛鳥まで招請すべきという要望がなされたと私は考えている。
孝徳天皇にしてみれば難波宮ですべての外交儀礼に関わる行事を完結させるつもりであったろうが、第2次遣唐使が出発した翌月には「大道の修理」を命じているので、飛鳥への招請は承知したのであろう。
たしかに飛鳥およびその周辺には飛鳥寺だけでなく、前回の唐使・高表仁のときにはなかった巨大な九重塔を擁する初の勅願寺・百済寺が鎮座している(高表仁は大和入りしていないので、すでに建立済であったとしても見ることはなかったが)。倭国での仏教への取り組みを唐使に向けてアピールできるわけで、決してわるい展開ではない.....。

ところが、唐使が来るまでに宝姫王がしておきたかったことは、飛鳥への道路を清めるどころの話ではなかった。
彼女が要求したのは、自らが大王としてやり残した事業、すなわち飛鳥という聖地にふさわしい“祭祀都市・飛鳥”の建設だったのだ。
彼女の構想を実現するためには、膨大な民の動員を要し、さらに倭国にはない山城建設の技術が不可欠だった。

到底孝徳天皇が承服できるものではない。
そこで、宝姫王がこだわる皇帝祭祀を行う代替地として孝徳が持ち出したのが、山崎(京都府乙訓郡大山崎)だったのである。

コメント

代替地

「唐の答礼使、飛鳥まで来させなさいよ、神聖な地なんだから」
「えええ~、せっかく難波に立派な宮を造ったんだからさ、そこでいいじゃん」
「ダメだって。やっぱ飛鳥でしょ。中大兄もそう言ってるもん」
「姉ちゃん、それはワガママってもんじゃね?」
「ワガママって何よ、ワガママって。あたしを誰だと思ってんの」
「もう、しょうがないなぁ。じゃあわかった、山崎でどう? それらしいもの造らせるからさ」
「ダメなの! 飛鳥じゃなきゃダメなんだってば!」
と、タカラちゃん、ぷんすか怒って飛鳥に帰る。あまりに怖いので一族郎党彼女に付き従う。

・・・てな感じですか?
でも、いきなり代替地を、それも遣唐使が出発してから「こっちは?」と言い出すのは、ちょっと無理っぽくないっすか・・・? 前々からそれらしき地だったっていうんならともかくも。

Re: 代替地

梅前さま、久々の寸劇ありがとうございます。
こっちのタカラも健在ですね。

> でも、いきなり代替地を、それも遣唐使が出発してから「こっちは?」と言い出すのは、ちょっと無理っぽくないっすか・・・?

まさに痛いところをつかれました。
実はそれに対して用意している回答が、この説について自分でも“トンデモ”と言ってしまうゆえんでもあります。

次回、うまく理屈が通ることを祈りつつ、乞うご期待。

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